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コラム

IMGアカデミー コーチ座談会 01

2019年8月19日

IMGアカデミー コーチ座談会 01

 

アメリカの大学に留学しテニスのStudent-Athlete(スポーツ特待生)として活躍、現在はIMGアカデミーでコーチを務める佐藤悠史(Hisa/左)、野井夕夏子(Yuki/中)、弘岡竜治(Ryuji)の3人と座談会を開催。自身の経験を元にアメリカだからこそ実現するスポーツ留学の可能性をお届けします。初回は大学留学の際に苦労した英語のことやリクルートについて。さらに生徒として、アスリートとして大学で活躍する面白さについて大いに語ってもらいました。

 

TOEFLスコア12点でも入学できた!?


——まず、どうやって大学に入ってStudent-Athleteになったか教えてください。

 

Yuki「私の場合はfacebookを通じてアメリカの大学のコーチからメッセージがきたんです。ワシントン大学とアーカンソー大学と、あと何校か。高3の年に(日本で行われる)世界スーパージュニアテニス選手権大会でベスト8に入ったことで、急に注目を集めたみたいで」

 

——facebookで連絡が来るのですね?

 

Yuki「まず、大会の成績は注目されているので、気になる選手がいればコーチはfacebookとかSNSを通じてコンタクトするケースは多いと思います。私は当時、大学進学に興味がなかったのでメッセージはスルーしていました。高校を3月に卒業してプロツアーを少し回っていたんですが、アーカンソー大学のコーチが定期的に連絡をくれていたこともあって、10月くらいに一度返信をして、それから話が一気に進みました。ただ、1月に入学となると3ヶ月しかないし、TOEFL(留学生が課せられる米国の大学に必要な英語テスト。120点満点でリーディング、リスニング、スピーキング、ライティングと4つのパートに分かれており総合的な英語力が求められる)の点数が致命的にひどくて……」

 

——ちなみに何点でした?

 

Yuki「……12点とか、かな?」

 

Hisa&Ryuji「……え!?」

 

——それは、けっこうヤバいやつでは(笑)?

 

Yuki「はい(笑)。連絡をくれていたコーチにそれを伝えたら、最低でも60点以上は必要だと言われました」

 

——TOEFL80点を最低ラインにしている大学が一般的ですよね?

 

Ryuji「Student-Athleteの場合は、運動部のコーチから大学のAdmissions Officeに進言してもらうことで、点数をある程度考慮してくれることもあります」

 

Yuki「入学に必要な最低点を下げてもらったんですが、その時点で残りが2ヶ月もなかったので無理だろうということになって、そこで紹介されたのがVCU (Virginia Commonwealth University)ともう一校で、そこはTOEFLスコアを入学の条件にしていなかったんです」

 

——スコアがいらないというのは公式に認められているということ?

 

Yuki「(第二言語としての)英語のプログラムがあったので通常のクラスとは別に履修すれば大丈夫という条件でした。ただ、TOEFLを免除してくれる大学はとても少ないと思います」

 

Ryuji「SAT(留学生以外も、すべての入学希望者が提出する共通テスト。読解問題、ライティング、数学で構成されている。代わりにACTというテストを受ける場合もある)は受けた?」

 

Yuki「はい。数学で他の悪い点数をカバーできたので大丈夫でした」

 

——日本人留学生あるあるですね(数学と読解問題の総合得点で判断する大学が多く、日本人の場合、数学で点数を取りやすいので英語問題の点数が低くてもカバーできる留学生は多い)。少し意外なのは、アーカンソー大学のコーチが他校を紹介してくれたことです。

 

Yuki「そう思います」

 

Ryuji「それは“いいコーチ”ですよ。だって、他の大学に選手を譲ることになるので」

 

——確かに。日本ならもっと“囲い込む”というか、敵に塩を送るようなことはしなそうなイメージです。

 

Yuki「他のケースでも、たとえばスカラーシップ(奨学金)がすでに配り終えてない場合、別の大学ならまだあるよ、とか教えてくれることはよくあります」

 

——コーチ同士は情報をシェアする機会が多いということですかね?

 

Hisa「たとえばSAACs (Student-Athlete Advisory Committees。大学のStudent-Athleteを対象にした委員会)の集まりにコーチたちも来ますし、情報を共有する機会は多いと思います」

 

Yuki「コーチ同士のネットワークが間違いなく強いと思います」

 

Ryuji「毎年、試合の対戦相手になる同じカンファレンスのチーム同士なら必ず知り合いですし、情報はお互い知っているでしょうね」

 

 

 ネットワーク次第で米国大学進学の道が開ける

 

——Hisaコーチは米国の大学に入る前はどんな状況だったんですか?

 

Hisa「日本で高校生だった時は、いわゆる“いい学生”じゃなかったです。成績は5段階評価だったら、ぜんぶ3くらい。理系なのに数学のテストが平均40点くらいしか取れなかったり。まあ“アベレージ”の高校生だったと思います」

 

——留学の予定はもともとあった?

 

Hisa「いや、特になかったです。でも、日本で大学生になるイメージがどうしても湧かなくて……受験勉強にも身が入らなくてほとんどしてなかったです。周りが大学入試に向けて勉強しているところで、頭の中が真っ白だったというか」

 

——将来のビジョンが描けていなかったんですね。

 

Hisa「父親に進路を訊かれたときに“何もない”と正直に答えたんですね。『じゃあ、アメリカに行ってみたら?』と提案されて。テニスをやるかどうかはともかく、海外に行かせたかったというのはあると思います。僕自身も、すごくミーハーですけど“海外でプレーするアスリート”に対して漠然と憧れみたいなものを抱いていたのもありました」

 

——中学生の頃から数ヶ月単位でIMGアカデミーのキャンプには参加していたんですよね?

 

Hisa「はい、何度か1〜2ヶ月くらいの長さでキャンプに来る機会がありました。ある時、IMGアカデミーのテニスコーチに進路を相談させてもらって、大学をいろいろ紹介してもらいました。フロリダにある何校かのキャンパスを実際に訪問しましたね」

 

——Yukiコーチのように大学のコーチからスカウトがあった、というわけではないのですね?

 

Hisa「目立った試合実績があったわけでもないので、行く先々の大学でコーチの前でテニスを見せる、という……」

 

——“たのもう!”という道場破り的な(笑)?

 

Hisa「(笑)。IMGアカデミーのコーチから事前に連絡を入れてもらってはいました」

 

——でも、初めて会う人の前で、実力を示さないといけないわけですよね? 緊張しませんでした?

 

Hisa「正直、緊張しましたよ。でも、とにかく後悔しないでやろうと思ってプレーしましたね」

 

——日本の大学で部活に入る場合も、同じようにキャンパスを訪ねてプレーすることもあるんですか?

 

Ryuji「どうでしょう、大学のコーチが大会に選手を見に来る方が多いんじゃないですかね。インターハイとか全日本ジュニアなどの全国規模の大会から、関東エリアとか県大会も見に来る場合もあります」

 

——米国の場合は、ジュニア選手のデータベースを大学のコーチは見ますよね? 最近だとUTR(Universal Tennis Rating)とか。日本だとそのようなデータはありますか?

 

Yuki「全国のランキングとなると大人も含めたものはありますが、ジュニアだけのデータはないですね」

 

Ryuji「地域ごとにはあるんですけどね。あとは世界で共通のITFとかUTRのポイントが付く大会に出ていたらコーチの目に触れられますけど、米国のようにシステム化は進んでいない印象です」

 

Hisa「(米国に比べると日本の)大学のコーチが多くの生徒のデータを見たり、実際に接するチャンスは少ないと思います。大会も時期が固まっていますし、それほど機会が多くない」

 

——なるほど。Ryujiコーチはどうやって米国の大学に入ったのですか?

 

Ryuji 「シンガポールにいた際のテニスコーチのツテで、米国の大学にコネクションがある方にサポートしてもらうことができました。僕の場合は日本の大学進学も、プロになることも一応はオプションにあったんですけどね」

 

——そんな状況で、どうして米国の大学を選んだのですか?

 

Ryuji「全日本ジュニアとかそのレベルの大会で決勝に出るくらいの結果を残せば、シンガポールで所属していたテニスクラブの親会社がスポンサーになってくれるという話もあったんですが、ベスト8が最高だったのでプロになるのは難しかった。日本の大学も実際の練習を見に行ったりもしましたけど、米国の経験者の話を聞く中で、よりよいオプションだと思うようになりました。でも、自身の戦績としては、そこまで目立つものではなかったので……」

 

——全日本ジュニアベスト8というのは米国の大学からスカウトされるほどでもない?

 

Ryuji「大学にコンタクトして、こちらから伝えるにはアピールになりました。最近でこそ米国の大学コーチは日本の大会を見るようになりましたけど、当時は注目されていなかったので」

 

——日本の大学に行くオプションもあったのですよね? 実際に練習を見に行って、それで選ばなかった理由は何でしょう?

 

Ryuji「行きたいと思える大学はありました。ただ、日本人だけの環境でやりたいと思えなかったのも一つの理由かもしれません。それに、勝手なイメージかもしれませんけど、飲んで、遊んで、バイトして、クラブに行って……という大学生活が自分に合うとは思えなくて(笑)」

 

——確かに想像できない(笑)。

 

Hisa&Yuki「(笑)」

 

Ryuji「米国の場合はテニス以外に勉強も大変と聞いていたので」

 

——大変なことが、ポジティブな理由になった⁇

 

Ryuji「苦しいのが大好きなんです」

 

Hisa&Yuki「(笑)」

 

——それは、なかなか“いい性格”をしてますね(笑)。

 

Ryuji「高校時代の部活動で厳しく育てられたのもあるかもしれません。ラクな状況は物足りなくなってしまう、というか。高校生最後の3月くらいに米国の大学に行くことを決めて、それまで特に勉強していたわけでもなく、最初に受けたTOEFLのスコアは38点でした。英語力を伸ばすなら米国に行ってしまった方がいいというアドバイスもあってクラブメッド(フロリダにあるテニスおよびゴルフのアカデミー)に6ヶ月間、滞在することになりました。自分が入った年はクラブ自体が始まったばかりで勉強のシステムがまだ整っていなかったんですよ。だから、クラブの人ではなくおそらく外部の人だと思うのですけど、地元のおばあちゃんと1日1時間半から2時間くらい英語のレッスンを受けていました。10月くらいになって、大学が求めるTOEFL71点をクリアできたので、年明けの1月から入学することになりました」

 

——UK(University of Kentucky)に入学を決めた理由は?

 

Ryuji「クラブメッドに入っていた時に大学のコーチがわざわざ来てくれたり接点を持つことが多かったのがポイントですかね。条件としては田舎で、日本人がいないところで、テニスと勉強に集中できて……」

 

——苦しそうなところ(笑)?

 

Ryuji「そうです(笑)。厳しそうなところが良かった」

 

——一般的に、アメリカンフットボールや野球だと、たとえば2年前からリクルートがある場合もありますが、テニスはギリギリのタイミングで選手獲得があるのですか?

 

Ryuji「いや、前からスカウトされるケースはあります。特に米国内の生徒たちは大学のコーチと接点も多いし、情報も回っているので。そういう意味で、留学生の場合はギリギリになることが多いかもしれません」

 

——各大学が獲得できる選手の人数はどのくらいですか?

 

Yuki「奨学金が出せるのは、女子チームは8名です。Walk-onという奨学金なしの生徒(一般的にレギュラーメンバーよりも実力は低いがチーム所属を第一優先で希望する選手をWalk-onとして受け入れることが多い)がいても、トータルで10名くらいが最大ですかね。大学のチームとしてはシニア(大学4年生)の選手が何人いるか、卒業のタイミングを見越して数年前から選手獲得に動いているのは確かです」

 

Ryuji「男子チームの場合は、奨学金を満額出す選手を少なくして、何十パーセントかずつを複数の選手に分散させるということもあるので、選手獲得にもう少し柔軟性があるかもしれません」

 

 

日本人選手が米国の大学でやれる可能性は?


——日本の生徒が米国の大学に入る場合、目安としてどの程度の実力があると現実的なんですか?

 

Yuki「全日本ジュニアとかインターハイに出場していたら、可能性は十分にありますよ」

 

Ryuji「全国大会の実績がなくても、たとえば関東の大会とかで活躍するレベルでも可能性はあると思います。米国内でランキングが高いトップ校は無理だとしても、D-1(NCAA/全米大学体育協会がカテゴリーわけする3つのディビジョンのうちのトップカテゴリー)でも十分やれます」

 

——米国の大学となかなか接点がない日本人がやるべきアピールの方法としては、たとえばビデオを送ったりするのがよいですか?

 

Yuki「有効だと思います。たとえばインターハイでベスト16だった女子選手が、最初は興味を持たれていなかったけど、ビデオを送ったら入学が実際に決まったりしています」

 

Ryuji「あとは、シングルスだけじゃなくて、ダブルスの戦績もアピールポイントになりますよ。僕の場合もダブルスを評価してくれたのも入学が決まった大きな理由だったと思います」

 

Yuki「ダブルスができる選手は絶対に欲しいと思います。個人戦だけじゃなくて、大学にとってはダブルスを含めたチーム戦がとても大切なんです。あとは、性格がまじめ、とか……」

 

——え? 性格ですか⁇

 

Ryuji「”チーム”として活動するので、その選手が入ることで雰囲気がどうなるか重視するんですよ」

 

——個人スポーツということもあって、戦績だけ見られるのかと思いました。

 

Yuki「大学にもよりますけど、とにかく戦績が良いスーパースターを集めたいところもあれば、チームに貢献できる人を欲しがるところも多いです」

 

Ryuji「少しステレオタイプというか“日本人はまじめ”という評価が大学のコーチの間であるような気はします」

 

——なるほど。日本人として有利になる場合もありそうですね。

 

Ryuji「実際に、最近は日本人選手が増えてきたと思います」

 

——特別な理由はありますか?

 

Yuki「日本の中で注目されていた選手が、今までのようにプロになるか日本の大学に入るのではなく、代わりにアメリカに来たので、その道があるんだ、と知られるようになったことが大きいと思います」

 

Ryuji「僕が卒業したUKなんて、今は男子が2名、女子が1名で合計3人の日本人が所属していますからね」

 

Yuki「日本だけじゃなくてアジア全体も注目さているので、たとえば韓国とか台湾からも選手が増えると思います」

 

——日本人で米国の大学進学を考える人がいるなら、準備すべきことは何ですか?

 

Hisa「やっぱり、英語でしょうね。日本で勉強することもできますし、僕の大学なら語学学校が併設されていて、そこで12段階にレベル分けされたクラスをクリアしてテストをパスできたら米国の4年制大学に入れるという、TOEFL以外でも英語を突破できるオプションもあります」

 

Yuki「あとは中学/高校の成績です。GPA(学校で履修する授業の評定平均値)が良ければ入学には有利になります。だから普段から学校できちんと勉強しておいたほうがいい。SATのスコアに関係してくるので」

 

——NCAAは日本の中学3年生から高校3年生の4年間の成績すべてのGPAを提出させます。そのポイントが高ければ高いほど、SATやACTのスコアが低くても大学で特待生になる条件をクリアできます。

 

Ryuji「とにかくGPAです。普段から授業に出て、きちんとやっていればポイントを挙げられますし、SATとか試験でスコアを出す方がよっぽど難しいと思うので」

 

米国の大学で勉強することは実際しんどい?
Yuki「勉強という意味では、大学に来てからが勝負ですかね。一般的に米国の大学は入学は簡単で卒業が難しいと言われていますけど、その通りで、私は大学に入ってから授業が大変だと感じました」

 

——Student-Athleteの場合は、一般の学生よりも在学中に求められる成績も高くて、さらに練習や遠征もあって大変ですよね。日本ならテニスが強いなら評価されて、授業はそこそこにコンパしてバイトして、でもやれなくはない。米国でスポーツをやる方が苦しい。

 

Ryuji「Student-Athleteを実際にやってみて、めちゃくちゃ大変でした……」

 

Hisa「でも、大変な分、周りの評価がとても高いとは思います」

 

Ryuji「(社会的な)地位がとても高いのは確かですね」

 

Yuki「大学の中でも、いろいろな意味で評価されて、待遇も良かったですし」

 

——奨学金が出たり、特別なトレーニング施設が使用できたり、勉強のサポートも多く受けられたりしますし、地域の人たちから応援されるヒーロー/ヒロインだったりするのは見ていてとても憧れます。

 

Hisa「米国で勉強することは、実際に大変だと思うんですね。僕の場合も1年生の最初、授業形態を見るだけでびっくりしたのを覚えています。クラスは少人数で20人くらいが最大でした。日本のクラスと違って椅子の並べ方を丸くすることで全員の顔が見えるようにしたり、ごまかしが効きません。正直に言うと、最初はちょっとメンタルをやられたというか、焦りましたね。これがアメリカなんだ、慣れていかないといけない、と」

 

——強制的に授業に参加させられる、という感じ?

 

Hisa「そうです。学期の最初に、そのクラスで成績がどのように評価されるか説明があるんですけど、アテンダンス(出席)が重要で、授業によっては50%がアテンダンスによって評価されるものもありました。その他はディスカッション(授業内での討論)が30%、残りがテスト、とか」

 

——授業にどれだけ貢献できるかが重要ということ?

 

Hisa「そうです」

 

Ryuji「考え方によっては、きちんと授業に来て、積極的に参加していれば授業をクリアできるということでもあります」

 

——日本の場合、ほとんどは参加することよりも中間や期末のテスト結果が成績に大きく反映されますけどね。“代返”とかもあったな……(笑)。

 

Yuki「代返することはないですね(笑)。無断で欠席すると先生からStudent-Athleteのアドバイザーに伝わって、そこからチームのコーチに報告がいくことになっていましたし、何度か繰り返すと練習や遠征にも連れていかれない厳しいルールがありましたよ」

 

——こういう話を聞くと、これから米国に来たいと考えている人にとっては“ハードルが高い”と思われますかね?

 

Hisa「僕は、人生の中で一番勉強した4年間だったと思います。そして、一番充実した4年間でした。勉強したいかはともかく、そこにある環境が、生徒を勉強するようにしてくれます」

 

Yuki「卒業した今となっては、“勉強したな”という達成感や充実感がありますね」

 

——気持ちだけではなく、実際に何か得られたことはありますか?

 

Hisa「コミュニケーション能力は明らかに高くなります。たとえば成績が良くない場合、先生のオフィスにいっていろいろなアドバイスを受けたりできる“オフィスアワー”があるので、コミュニケーションによって試験の対策ができたり、成績に有利になったりします。テニスコーチには、絶対に先生に会いにいけ、とアドバイスされました(笑)」

 

Yuki「私はVCUからFSU(Florida State University)に編入したんですが、特にVCU時代は英語力もなかったので頑張りました。テストも周りの生徒が帰った後も最後まで粘っていると、先生が問題のポイントを教えてくれたりして(笑)」

 

Hisa「英語力と単純に言うよりも、交渉力とかコミュ二ケーション力が大切なことを学びましたね」

 

Yuki「授業でプレゼンが多かったのも印象に残っています。単純にテストを受けるより点数も取れるし、頑張りました」

 

Ryuji「英語力がないうちは緊張しますけどね(笑)」

 

Hisa「授業が実践的なのも米国の特徴かもしれません。マーケティングの難しいクラスがあったんですけど、2人1組になってオンライン上で靴屋を展開しました。毎週の売り上げを報告して、僕らのチームはひどい結果だったんですけど、授業の最後にマーケティングの先生と、ビジネスの先生2人が株主という設定で、彼らに売り上げの結果や分析をきちんと理論立ててプレゼンすれば良い成績を取ることができる内容でした」

 

Yuki「いろいろなタイプの授業があるのもいいですよね。私は演劇の授業とか楽しかったです。その日のお題に合わせて3人組でストーリーを作って発表したり、好きな歌を選んでそれに合わせて演技をしたり、クラスメートとコミュニケーションするのでとても仲良くなりました」

 

Hisa「日本だと美術や図工が苦手だったんですけど、アートの授業も楽しかったです。モデルさんの模写をして、30秒ごとにポーズを変えられるので、短い時間に描かないといけない。最初はひどいものでした(笑)。終わったら、みんなの作品を鑑賞し合って、それで描き方を学んでいきました」

 

——座学が多い日本の授業と比べると、先生や生徒とコミュニケーションする機会が多いですね。

 

Ryuji「勉強すること自体にみんなモチベーションが高いですよ、アメリカは。図書館はいつも混んでるし、スターバックスのコーヒーを持ち込んで、勉強するのかっこいい、みたいな(笑)」

 

——アメリカの大学あるあるですね笑。確かに、図書館とスターバックスはセットだった。

 

Hisa「大学を卒業してからアメリカに残るにしても、日本に戻るにしても、米国の大学に入ると“濃い”体験ができるから意義は大きいと思います。中学の顧問の先生に“テニスは自分を表現するものだ”と言われたけど、当時は理解できませんでした。米国で大学生になって、英語ができなくて、授業で討論もできなくて、最初は教室の中ではなかなか存在感を出すことができなかったけど、テニスをやっていたことで試合を見に来てもらえたり、注目もされて達成感もあった。(Student-Athleteになることで)一般的な生徒とは違う体験ができたのは間違いないです」

 

Yuki「日本でプレーしていた時は、勝ったらすごい、負けたら終わり、と強く感じていたんですね。アメリカに来てからコーチに言われたことで覚えているのは、勝ち負けで人格は評価されない、ということ。勝敗と自分の人格は切り離して考えらえれるようになりましたし、かえってスポーツに思い切り取り組むことができるようになりました」

 

 

スポーツか、勉強か。日本では二者択一である印象は強いが、ここ米国では、勉強もスポーツも両立することが当然で、特に大学でStudent-Athleteとなる特待生は文武両道のヒーロー/ヒロインになることを理解いただけたと思う。体育会系、という言葉もないし、アスリートでいることは、つまりスマートで社会的地位も高い。海外にチャレンジしたい中高生がいれば、アスリートにとって大きな可能性を広げられる米国留学はぜひ積極的に視野に入れてほしい。そして、日本の大学だとしても、つまらない古い慣習にとらわれず、人を育てるスポーツが持つ本質的な力を信じて、新しい在り方を目指して欲しいと心から願っている。
 

 

 

文:田丸 尚稔

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